DAC購入記 ~Lavry Engineering DA-N5 QUINTESSENCE~

 さて、先日ツイッターの方でも書いたのですが、Lavry Engineering DA-N5を購入しました。これに関してなぜ購入したのかなどを書いてみたいと思います。

 

 私のこれまでの主なDAC遍歴は、FW1814(M-AUDIO)→m904(GRACE)→HILO(LYNX)→Lyra2(Prism Sound)です。見事にオーディオIF等のスタジオユースあるいはDTM系の機種ばかりですが、これは私がオーディオを本格的に開始した時期に起因しています。
 その当時はPCオーディオはピュアオーディオの世界では殆ど対応した機種が無く、USB-DDC等もほぼありませんでした。そんな中でPCで良い音を出すためには、実質的にはオーディオIFを使用するしか選択肢が無いというような状況だったのです。

 勿論その後に状況は変化していきますが、ピュアオーディオ系の機材に乗り移るには変化が大きそうなこと、オーディオIFのDACはあまり大きな脚色を行わない思想が殆どで、個人的にそれが好ましかったためにそちらの系統を使い続けてきました。

 

 そして、以前の記事でも書いた通りTheta DigitalのCasablanca2の音質とLyra2(及びこれまで使用した機種)の音質を比較したときに、色々と考えさせられました。
 それはオーディオIFとピュアオーディオ系の音の違いとかではなくて、もう少し普遍的なことです。
 DACはデジタル領域が占める割合が多いために、最新のチップ、あるいは技術を取り入れた機種の方が良く、ハイエンドと言えど古い機種は買わない方が良い(音質が悪い)とする考え方に疑問を持ったのです。

 確かにそういう側面もあるとは思いますが、DACはよく考えてみればアナログ領域の部分もかなりのウエイトを占めているはずです。となると、単に最新技術を使ったり新しいDACチップを使うだけでは改善できない領域があるのではないか、もう少し有体にいえばハイエンド帯ほどにコストをかけなければ到達できない領域があるのではないかと考えたわけです。

 もちろんこれは単に個人的な考察だけではなく、多くの情報発信をしてくださっている技術者の方の情報も大いに参考にさせてもらっています。

 但し、m904→HILO→Lyra2と使用機種を変えた際の音の質的な変化量の少なさ、そしてCasablanca2で到達している音質との対比から大きな影響を受けた事は間違いありません。

 そんな訳で、一度はハイエンドと呼ばれる領域のDACを購入し、聞いてみたいという思いが強くなりました。ですが、一口にハイエンドと言っても価格差はかなり大きく、ハイエンドの中でも上の方(最近ではスーパーハイエンド等とも言いますね)はとても手が出ませんし、そうで無くとも新品では購入がかなり厳しいです。
 そこで中古購入をメインに考えつつ、定価で100万円を超える機種を対象に、購入額が100万円に近い価格(70~80万円、もしくはその近辺が理想)で購入できる機種という条件で、候補探しをすることにしました。
 取り合えず各メーカーの思想、採用技術、市場の評価、音質傾向、中古市場の状況等からざっと以下の機種を候補にしました。また、購入時期については流石に2019年内は動きすぎたために、まずは情報収集をメインとして2020年になってからを考えていました。それまでに売れてしまった機種は、縁が無かったと思って諦めます。

 

~国内中古市場~
CHORD DAVE 概ね90万円程度
Playback Design MPD-5 概ね75万円程度
Esoteric D-01 VUK 概ね70万円程度
Meitner MA-1  概ね63万円程度
Accuphase DC-901 概ね55万円程度
Weiss MEDEA 概ね55万円程度

 

~海外中古市場(ebay)~
DCS Scarlatti DAC 概ね90万円程度
DCS Elgar Plus + Purcell 概ね65万円程度

 

 なおこの候補から見てわかる通り、最初はDA-N5は候補に入っていませんでした。
 実はDA-N5自体は個人的に最も欲しかったDACで、一番好きな音がする可能性が高いDACだと考えていました。しかし、中古で出てくる可能性は皆無に近く(実際に探した期間で一度も見かけなかった)、かといって新品購入は若干厳しかったため、無理するかどうかを悩みながらもひとまずは候補に入っていなかったのです。

 これらの候補の中で、途中まで最も有力な候補だったのはScarlatti、次点でDC-901でした。 他の品が状態が中古品だったのに比べ、Scarlattiはメーカー整備品だった事、音質傾向も好みに近そうだったことがその理由です。
 ですが、これまで大きな買い物が海外通販が続いたこと、更にそこまで早急に決定しなくても良い事などもあり、候補を絞った後も情報を探し続けていました。
 DC-901も候補から消えたわけではなく、むしろScarlattiとほぼ互角の勝負で、ある程度時間を置きながら悩み続けておこうと考えていたのです。
 そして、もし買う事を決めたときは、最終的にDA-N5でなくて本当に良いかを改めて考えて決定しようと思っていました。

 そんな時に、DA-N5がブラックフライデーで13万円引き(2019年12月27日まで)という情報を目にします。 国内で取り扱っている所を調べてみると、公式直販、Rock on Company、宮地楽器がブラックフライデーの値引き後の価格で取り扱いしていました。
 更に公式や宮地楽器は消費税の増税に伴うキャッシュバックキャンペーン(キャッシュレスで5%)に価格の上限(概ね2万円前後)がある中、Rock on Companyでは独自のキャンペーンをしており2019年末まで上限なしの6.9%引きという大盤振る舞いの状況であることがわかります。
 最終的には、新品購入で大体定価の2割引き位という信じられない価格になったために、先ほど挙げた候補は一瞬で消し飛び、2020年以降に動くという予定も変更し、12月にポチった次第です。
 受注生産品だったようで、納期自体が1月以降になることを告げられ結構長引くことを覚悟していたのですが、思ったよりもかなり早く1月11日に納品されました。

 

 因みに他の候補の選別過程についてもざっと記載しておきます。
 この中では、多分DAVEが調べる限り一番質の高い機種だったと思っています。ですが、私の使用方法でどうしても無視できなさそうな問題点があったこと、音が好みで無いことがほぼ間違いなさそうだった点がネックになりました。
 Elgar Plusは発売から時間が経ちすぎており、購入後に整備する必要が出た場合下手をすればトータルでScarlatti以上のお金がかかりそうだったので没。
 Playback DesignとMeitnerのDACは結構癖がありそうな機種だった事、これらもまた好みと違う可能性がとても高かったために没。
 MEDEAは+OP1-BPではなかったためちょっと他の機種と比べると質的に劣るかもという懸念が消せず没。
 D-01  VUKはやはり発売から時間が経ちすぎていて状態が不明なことと、mono DAC×2という構成と同社のトラポ等と組み合わせないと活用しにくい機能等があることが気になり没。
 DC-901は先にも書いた通りScarlattiと並んで最後まで候補に残り続けました。商品の状態とDCSというネームバリューを取るか、国内で買えるという事と定番かつ好みにも近いと予想されるという点を取るかの違いでした。DA-N5さえ現れなければどちらかを購入していた可能性か非常に高かったです。

 そして、感じた疑問についての答えについては、現状ではDA-N5の音を把握することに精一杯で確たることは言えませんが、恐らく部分的にであれ間違っていなかったのではないか、と考えています。この辺りについては、DACのレビューを出来るようになったときに改めて書いてみたいと思います。